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信用取引は、すごく使い勝手の良い「取引」なのですが、「危険な取引」「手を出してはいけない取引」と考えている人も多いようです。
誤解を解いて活用して欲しいと思うのですが、いざ、記事にしようと考えた時、しっかりと説明したら尋常じゃあない文字数になる事に気付かされます。
それだけ知って置くべき事が多いという事ですが、それを差し引いても、信用取引はすごく使い勝手の良い「取引」です。
信用取引を余す事なく正確に伝える事は証券会社にお任せして、この記事では、特に知って欲しい魅力やリスクをお伝えしたいと思います。
目次
信用取引の魅力は、何と言ってもレバレッジと売建てです。
そしてこれらは信用取引のリスクとして、1番に取り上げられる事でもあります。
どんな時にレバレッジを掛けるのか?
レバレッジを掛けるという事は、借りたお金で投資するという事に他なりません。そういう意味ではあまり初心者向きとは言えません。しかし、投資において、レバレッジを掛ける事は、悪い事ではなく、むしろ資金効率からすると良い事なので、それは間違えてはいけないポイントです。
レバレッジを掛ける大前提として、現物取引で少なからず利益を上げられている必要があります。レバレッジは利益や損失を増加させるものであり、損失を利益に変えるものではないからです。現物取引で損失を出しているのにレバレッジを掛けたら、損失が増すばかりです。
信用取引のもう1つのメリットの売建ては、利益が上がっていなくてもやって良いと思います。
レバレッジを掛けた方が良い場面は、良いと思った銘柄が、ボラティリティの高くない銘柄だった場合などです。そういう場合は、ボラティリティの高い銘柄を探し直すよりも、2倍なり3倍なりのレバレッジを掛けて、その銘柄に投資した方が良いと思います。
また、「良いと思ったら、いくらでも投資に使える資金がある。」という人は別にして、普通は、投資出来る資金の中で遣り繰りしています。
自分の相場感に自信がある時でも、ランクがあります。「凄く確率が高いと思う時」「確率が高いと思う時」「まあまあ確率が高いと思う時」などです。
私の知っている限りですが、現物株の場合、確率が高いと感じている時は、ランクに拘わらず投資資金の100%近くを投資している投資家が多いと思います。それは、最大のリスクやリターンの金額に対して、実際の値動きは、その何分の1位の値幅が大半だからです。
実際に受け取れそうなリターンの金額を考えると、見通しが良いと感じている時に投資資金を余らせる事はなかなか出来ません。そんな状況では、より確率が高いと思う時にレバレッジを掛ける事で、自分のイメージに近い投資配分が出来ると思います。
信用取引のレバレッジ
信用取引のレバレッジ「委託保証金の約3.3倍」という中途半端な数字は、どこから来ているのでしょう。
信用取引では、委託保証金が建玉の30%必要です。
委託保証金=建玉×30%=建玉×(3÷10)
→ 建玉=委託保証金×10÷3
という事で、委託保証金の約3.3倍信用で建てられます。
さらに委託保証金は株券や債券、投資信託での代用も可能なので、担保を株券にする事で、買いに関しては、最大でもう少しレバレッジが掛けられる事になります(株券の代用有価証券の掛け目は80%なので3.64倍位)。
レバレッジを自動車に例えると
現物取引をギアのないアクセルのみの自動車に例えるならば、信用取引はサードギアまで付いた自動車です。しかもバックギアまで付いています。
スムーズに進むと利益、もたもたしていると損失、事故を起こすと回復の難しい損失と例えます。
道路は見通しの良い直線道路もあり、曲がりくねった道もあります。
常にアクセル全開の人は、現物自動車に乗っていてもあちこちぶつけます。信用自動車に乗ろうものなら、スピードが出る分、大事故です。
しかし、曲がり道ではアクセルを抜き、直線道路ではギアを上げるまともな運転の出来る人が乗ったなら、性能の良い信用自動車に乗るメリットは非常に大きくなります。
投資も、早めの損切りやロットの管理など、損失を管理出来るのであれば、信用取引をするメリットは非常に大きいと思います。むしろ投資経験の浅い者が、現物取引だけというハンディを背負って戦う事の方が、リスクを差し引いても大きなデメリットではないかと思います。
売建てのメリット 売建てを考える事で相場感にも良い影響
下げ相場でも積極的に利益を取りに行ける。これが売建ての最大の魅力だと思います。また、買いと組み合わせる事でリスクヘッジをする事が出来る事も魅力です。
また、売建てをする事で、相場を売りと買いの両面から考える事が出来やすくなります。これも売建ての大きなメリットの1つです。
買いでも売りでも、建てる時には期待と恐怖があり、決済する時には未練と安心感があります。
買った銘柄を「持っているのが怖い、決済しよう」と感じるタイミングで、売建てる事を考えるともっと怖いと感じる事があります。売建てを始めると、決済しかないと思っていたタイミングが、実は、大きなチャンスでもあったと気付かされます。
売建てのリスクは躊躇なく損切りする事で回避
一方で、売建てのよく言われるリスクが、「売建ての損金は無限大」というものです。確かにそうなのですが、売建てのリスクとして注意しなければいけないのは、そこではありません。
売建ての1番注意しなければいけないリスクは、株価は値幅ではなく率を基準に動くという事です。
株価1000円の株を買建てた時、10%の値下がりは100円です。株価がずっと下がり500円になった後、10%値下がりすると値幅は50円です。買建ては損金が膨らめば膨らむほど、新たな損金の増加量は減っていきます。
対して、株価1000円の株を売建てた時、10%の値上がりは100円です。しかし、2000円になった後、10%値上がりすると値幅は200円です。売建ては、損金が膨らめば膨らむほど、新たな損金の増加量は加速度的に増えていきます。
売建ては、見通しを外した時に、躊躇なく損切り出来る事が大前提となります。
レバレッジを掛けずに、下げ相場で積極的に利益を取りに行く場合や、買いと組み合わせてリスクヘッジの効果を上げる事が目的ならば、現物取引で利益を上げられていなくても、売建ては活用した方が良いと思います。
注意点として、買建てと売建てを組み合わせても、取引量を2倍にすれば、最大リスクの大きさは2倍になります。現金取引を100として、買建て200はもちろん、買建て100+売建て100でも、取引量は2倍です。
買建てた銘柄が値下がりし、同時に売建てた銘柄が値上がりする事もあるので、最大のリスクは2倍です。しかし、お察しの通り、最大リスクは2倍でも、全て同時に失敗する確率は大きく下がります。現金取引100だけに比べて、損金の額を減らせる事がままあります。
信用取引を使っての税金対策は常套手段です
年末に益出しや損出しをした事はありませんか?
信用取引を使うと益出しや損出しがしやすくなります。
現物株の税金の計算は総平均法です。保有している銘柄を買い足すと、税制上の取得価格は平均化されます。
対して、信用取引の税制上の取得価格は建玉毎です。
両建てや2階建てや現引き、現渡しを使う事で、決済する価格を現物株の取得価格や建て価格、現在価格、或いはその平均などから選べる事になります。
次回は、信用取引のコストについてです。リスクよりもこのコストの方が、信用取引をやらない理由になるのではないでしょうか。
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株式(34)信用取引のコストを1つづつ解説
レバレッジを掛ける事や空売りなどのリスクにはメリットもあります。しかし、信用取引のコストにはメリットがありません。そして、なかなかに大きいです。信用取引をお勧めしない理由があるとすれば、コストの大きさかも知れません。
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株式(32)外国株式 新興国への個別銘柄投資は非常に困難
新興国のストロングポイントは、高い成長性、広い国土、豊富な資源、平均年齢の低い人口ピラミッドなどが挙げられます。リスクとしては、インフレ率の高さや、政治リスク、そもそも働くのが嫌いな国民性などもあります。