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株式(8)材料株の循環物色は投資家の性格と行動からの銘柄選定

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前回はテクニカル分析でした。今回は、銘柄選定を銘柄の良し悪しではなく、その銘柄を投資対象としている人たちにスポットを充てて見てみたいと思います。そして、次回は、通常の投資対象から選ぶ銘柄選定です。

投資対象に集まる投資家の性格を考える

投資対象の選び方はいくつかあると思います。好業績などの銘柄の持つ魅力や、株価位置などのタイミング、あるいはその両方を組み合わせて銘柄を選ぶ事が一般的かと思います。今回はそのどちらでもなく、その投資対象に集まる投資家の性格などから投資する銘柄を決めるというやり方です。何度も売り買いをする、長い付き合いになる銘柄を見つけたいですね。

銘柄を選ぶ時、すごく大切な事なのに、あまり考えられていない事があります。ライバルの存在です。株式は対人競技です。ボードの向こうにはライバルの投資家がいて、売買を通じて利益の奪い合いをやっているのです。そして、株式は3700銘柄もあり、銘柄によって参戦している投資家は千差万別です。

優良銘柄は、資料も豊富で素人も多く参戦していますが、強力な調査能力を持った運用機関なども参戦しています。対して、アナリストレポートもあまり出ていないような銘柄は、銘柄としての魅力には欠けるかも知れませんが、プロの運用機関はあまり参戦していなかったりします。その銘柄の値動きの特徴などを掴んでしまえば、割りと勝ちやすくなったりします。出来高の極端に少ない銘柄や業績の芳しくない銘柄には、プロの運用機関はあまり参入してこない印象があります。参入する投資家による値動きの違いは、極端な例では「日経225採用銘柄と採用されていない銘柄」「年金資金が買う銘柄と買わない銘柄」などがあります。正攻法ではないかも知れませんが、有効な戦い方です。ただ、残念な事ですが、上場企業だからと云って、全ての銘柄が健全な状態にあるわけではありません。マイナーな銘柄を選ぶ時にはハコ企業に気を付けましょう。

 

他の投資家と違う事をしてはダメ! 同じ行動を先にする事が大事です!

ここで投資家の行動に注目した銘柄選定の2つの考え方を紹介します。まったく違う道ですが、大切な事は同じです。

1つめは「王道銘柄を買え」です。国際優良銘柄などの、多くの人が買う銘柄は多少買い遅れても、まだ自分の後に買う人がいるだろうから大丈夫だろうという考え方です。ここでのポイントは多くの人が参戦する銘柄なので「自分の後にも買う人がいるだろうこと」です。ただし、自分の後に買う人がいても、最初に買った人達が売り始めて、「売り>買い」の状態、いわゆる売り長の状態になる前に売らないといけません。国際優良銘柄などが、比較的に安全などと言われるのは、投資家の数が多く、穏やかに売り長になってゆく事にもあると思います。

もう1つは「人の行く裏に道あり花の山」という格言です。「人の行かない道を行け」と捉えられがちですが、ちょっと違います。「獣道を行け」とは言っていません。人の行っていない道を行くのは良いのですが、他の人たちもその道が良い道と気付き、後から付いてきてくれないと、上がりもしなければ売れもしません。

銘柄を選ぶ時は「その銘柄が良い」理由の他に「その銘柄の良さに、これから人が気付く」理由も、少し考えましょう。

どちらの考え方も、自分が先に良いと気付いた銘柄に、後からどれだけの人が同じように良いと気付いてくれるかという点がポイントになります。

しかし、自分が売り買いに係わりそうな銘柄をネットなどで「良いの悪いの」書き込みアピールしたりすると、それが本当の事でも相場操縦や、嘘ならばさらに風説の流布などの罪にも問われかねないので絶対に止めましょう。

材料株とは? 循環物色とは? これほど他の投資家の行動が、意識される銘柄の選び方はないかと思います。

材料とは、株式の用語で株価を動かす要因の事です。材料株とは、その材料が実際以上に大きく評価されて株価が上がり、上がる事が材料になってまた上がるような銘柄の事です。いわゆる旬な銘柄ですね。

材料株は通常、1銘柄単独では上がって来ません。同じ材料の銘柄が数銘柄~数十銘柄グループで上がって来ます。材料は割安さよりも、大きな成長を連想出来る材料が元になることが多いです。

まず最初に、その材料で、1番大きく影響を受ける銘柄が、話題になり上がって来ます。この銘柄は、その材料で実際に業績がすごく良くなったり、会社が大きく成長する可能性も高かったりします。これを1番手(銘柄)と言います。ほぼ時を同じくして、1番手ほどではないのですが、同じようにその材料で大きな影響を受ける銘柄が上がって来ます。これを2番手(銘柄)、3番手(銘柄)と言います。1番手と2番手の間には、受ける影響に大きな差がある場合もあれば、あまり差がない場合もあります。

「すごく良い材料だと思うけど、(1番手は)上がってしまって買いづらい」→「2番手は出遅れているからこっちを買おう」→「3番手はまだ・・・」という具合に物色されて行きます。その他にも出遅れ、出遅れで、関連した銘柄が数銘柄、話題が大きければ数十銘柄が次々と上がって行きます。その間に日柄調整や価格調整を済ませた1番手が、再度物色されるというサイクルです。これを循環物色と言います。いわゆる、相場のうねりとも言いますが、この循環物色が発生しないと、大相場には発展しづらいです。資金がテーマの外に逃げていってしまうためです。関連で上がって来る銘柄の中には、少~し係わっているだけで、その材料ではほとんど業績や成長性に影響を受けない銘柄も多数あります。

材料株は、相場が大きければ大きいほど、ほとぼりが冷めた頃(日柄調整や価格調整が済んだ後)、もう一度物色される事があります。その時には、一度目よりも流入資金が少ないため、再度上がって来る銘柄数はかなり絞られます。関連の薄い銘柄は、ほぼ全滅でしょう。「セカンドウィンドウが吹いたのは2番手銘柄までだった」なんて事もよくあります。「高くても1番手を買っておけ」などと言われるのはこのためです。この「怖くてもなるべく1番手銘柄を買う」という行為は、その有効性を知っていても、怖くてなかなか出来ないと思いますが、材料株投資の大きなコツだと思います。「俺(あたい)の根性をなめんじゃねぇ!」と心の中で叫んで1番手銘柄を買いましょう!ただし可能性として、上がって来る確率は2番手以下の銘柄よりも格段に高いのですが、失敗した時に被る損金の額も格段に大きくなります。

2度目の相場が、稀に1度目の相場よりも流入資金が多い事があります。その場合でも、上がって来る銘柄数は1度目よりも絞られる傾向にあります。

※循環物色は、この他にも、物色の矛先が別の材料に次々と移り変わって行く、大きな循環物色もあります。これが発生するのは相場の良い時や、相場の悪い時ならこれから相場の良くなる兆しでもあります。

仕手株と材料株は違う

材料株と仕手株を同じと捉えるコメントをよく耳にしますが、私には違和感があります。仕手株というのは、仕手筋と言われる、狙った銘柄を買い上げて高値で売り抜けようとする一味がいます。ため込む前に株価が上がらないように数年掛けて買い込んでいき、バレないように名義変更もせず(当時は電子決済ではなく株券)ため込みます。そして、株価を吊り上げるとなれば、それこそ相場操縦やら風説の流布やら虚偽売買にインサイダー取引など合法、違法を問わずに吊り上げていく。仕手筋の棟梁1人の意思で、株価が形成されていく。仕手株にはそんなイメージがあります。そして、仕手筋は80年代から90年代にかけて、市場の取締り強化によってほぼ絶滅したとされています。材料株投資はれっきとした合法な投資です。

材料株 循環物色のまとめ

これほど他の投資家の行動が、ダイレクトに意識される銘柄の選び方はないかと思います。材料株投資は、流行りの旬な銘柄を買います。循環物色は、その流行り廃りで、物色の矛先が移り変わっていくことです。循環する事で、資金が外に逃げにくくなり、大相場に発展しやすくなります。

流行の洋服やおしゃれアイテムをイメージして貰ったら分かり易いでしょうか。素材が悪いとか、形が奇抜だとかで「バカバカしい」と一笑に付していたら、それこそ「頭が固い」と周りから笑われてしまいます。材料株も同様に、発生した環境を楽しみながら利益を上げる事を目指して下さい。

投資は、もちろん儲けるためにするのですが、それだけしか見えていないと、損が続いた時、辛く苦しいだけのものになります。投資を生活の一部として続けていくためには、知識が深まるとか、新鮮な驚きがあるとか、株主優待で美味しい物が送られて来るとか、儲ける以外の楽しみが必要だと思います。楽しむ気持ちを大切にしましょう。

周りの人がどうしているか気になり、人より先を行ってファッションリーダーになりたい。そして、ちゃんとファッションリーダーの席に座れる。そんな、流行に敏感な人は、株式でも材料株は向いているかも知れません。

次回も、銘柄選定で、通常の投資対象から選ぶ銘柄選定です。

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株式(9)企業の本質的価値からの銘柄選定2つとスクリーニング

企業の内容から選ぶ銘柄選定には、あの有名な2つの方法があります。トップダウンアプローチとボトムアップアプローチです。そしてもう1つ、銘柄スクリーニングによる銘柄選定は、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を同時に行えます。

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株式(7)テクニカル分析は株価位置、ひいては投資家の行動を分析する

ともすれば、テクニカル分析は数字の羅列と計算ばかりに気をとられてしまいますが、「過去の投資家の行動から、未来の投資家の行動を予想する」というものです。人の心と行動を予想する事こそがテクニカル分析です。それを数学で絞り込もと言うものです。

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