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株式(35)制度信用と一般信用の主な違いと各種規制

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制度信用取引は証券取引所の定めたルール

証券取引所の定めた制度に則って行われる信用取引です。

どこの証券会社で取引しても、取引き出来る銘柄や返済期日が6カ月などのルールは同じです。金利や貸株料などは、各社違います。

信用取引の買建てのみ出来る銘柄を制度信用銘柄、売建ても出来る銘柄を貸借(たいしゃく)銘柄と言います。

新規上場したばかりの銘柄以外は、殆ど制度信用銘柄に指定されています。貸借銘柄は、全上場銘柄の6割程度です。

品貸料(逆日歩)が発生するのは、制度信用取引のみです。

一般信用取引は各証券会社が定めたルール

各証券会社が、取引き出来る銘柄や返済期日などのルールを決められるのが一般信用取引です。

期日が無期限や日計り限定などの信用取引は一般信用取引です。

無期限でも、整数倍以外の株式分割がある場合など、後から返済期日が設定される事もあります。

主だった証券会社では、買建ては制度信用銘柄に加えて新規上場したばかりの銘柄にも対応していますが、売建ては証券会社によってバラつきがあります。

一般信用取引では、品貸料(逆日歩)は発生しません。

制度信用と一般信用の使い分けの目安

制度信用取引と一般信用取引のどちらでも対応している銘柄は、売建てで逆日歩が発生しそうな銘柄は一般信用取引、それ以外は制度信用取引で良いと思います。

一般信用取引の、無期限というのは魅力的に感じるかも知れませんが、そもそも信用取引で6カ月を越える長期の波動を狙うのはどうかと思います。思いがけず6カ月を越えて保有してしまう事になった場合は、ロールオーバーで対応すれば良い事です。

逆に、金利や貸株料の掛からない日計り限定の一般信用取引もありますが、金利や貸株料は1日分掛かっても、いざという時、翌日まで持ち越せる通常の信用取引の方が良いように思います。

制度信用と一般信用の主な違いの一覧表

各社共通で使える制度信用取引の、足りない部分を一般信用取引で埋めるという感じです。コストは、概ね一般信用取引の方が高く設定されています。

制度・コスト 制度信用取引 一般信用取引
買建て銘柄 取引所が定めた制度信用銘柄 証券会社が設定  ほぼ全銘柄
売建て銘柄 取引所が定めた貸借銘柄 証券会社によってまちまち
期日 6カ月 無期限など証券会社が設定 注) 整数倍以外の株式分割の場合は権利付き最終日に期日が設定される等の措置もある
売買手数料 どちらも同じ
買方金利 制度信用の方が低い事が多い
売方金利 どちらも現在は0%
貸株料 制度信用の方が低い事が多い
品貸料(逆日歩) 売方が払い買方が貰える なし
管理費 どちらも同じ
配当落ち調整金 受取(買建て)も支払い(売建て)も税引き後の配当額 受取(買建て)は税引き後の配当額、支払い(売建て)は税引き前の配当額
名義書換料(権利処理手数料) どちらも同じ

信用取引の各種売買規制

相場が過熱してきて、現在、或いは将来的に、貸株が足りなくなりそうな銘柄には、売買規制が掛かる事があります。

売買規制は、証券取引所、証券金融会社、各証券会社などが状況を見て掛けます。

各機関似たような規制を掛けてきますが、規制を掛ける理由はそれぞれ違い、重複して掛かって来る事もあります。

証券取引所が掛ける規制は、日々公表銘柄・増し担保規制などです。

証券取引所は、投機や相場の過度の過熱を抑える目的の規制を掛けてきます。

通常、信用取引の残高は毎週第2営業日に発表されますが、日々公表銘柄に指定されると「このまま相場が過熱していくと次の規制が掛かりますよ」という注意を喚起するために毎日公表されるようになります。そして、過熱感が収まらないと次の規制である増し担保規制が掛けられます。

増し担保規制は、増し担保規制の掛かっている銘柄を新規に建てる時の委託保証金率を引き上げる規制です。

通常、委託保証金率30%、現金担保免除という証券会社が多いと思います。

増し担保規制が掛けられると、委託保証金率50%(内現金担保20%)などとなり、それでも過熱感が収まらないと、委託保証金率70%(内現金担保40%)→委託保証金率90%(内現金担保60%)と進んでいきます。

それでも収まらなければ、新規の売建て又は、買建ての禁止と進んでいきます。

また、現物株で買付け代金を買付け当日に徴収する「即日預託」や、「成行買注文の禁止」などの規制も証券取引所が掛けます。即日預託は、買付け代金は約定日当日に必要ですが、買付けた株式が信用取引の担保に入れられるのは、受渡日(約定日から3営業日目)になるため、担保不足にならないよう注意が必要です。

証券金融会社が掛ける規制は、注意喚起銘柄・新規売建て禁止・現引き禁止などです。

信用取引において、売建てのための株券を調達してくるのは証券金融会社です。そのため、貸株不足を補うための規制を掛けてきます。

証券金融会社の規制は、証券会社に掛けてきます。それを受けて、証券会社は投資家に規制を掛けます。

注意喚起銘柄は、正式には、(貸株)注意喚起銘柄です。信用取引の売残高が増えてくると、将来的に貸株の調達が困難になるかも知れない事を、証券会社に注意喚起します。

実際に、貸株の調達が困難になってくると、新規売建て禁止や現引き禁止が行われます。

証券会社が掛ける規制は、新規建て禁止・増し担保・代用掛け目の引き下げなどです。

信用取引は、証券会社が顧客に「お金を貸す」「株券を貸す」などの信用を供与する取引です。

顧客の損金が膨らんでいくのを黙って放っておくと、供与した信用が返済不能になり、証券会社が損金を被ってしまうため、そうならないよう証券会社も規制を掛けたり、追証を要求したりします。

証券会社の規制は、証券取引所や証券金融会社の規制と、かなりの程度連動して掛けられてきます。

新規建て禁止と増し担保は、証券取引所や証券金融会社が規制を掛けていなくても、証券会社独自で掛けて来る事もあります。

代用掛け目の引き下げは、正式には、代用(有価証券の)掛け目の引き下げです。信用取引の担保の株券は、通常、現金の80%の担保価値として計算されます。しかし、暴落の危険性が高いと証券会社が判断した銘柄を証券会社独自で掛け目を50%などに変更する事があります。

少し紛らわしいですが、代用掛け目の変更は、担保の現物株(個別銘柄毎)の掛け目の変更、増し担保規制は、信用建玉(建玉毎)の委託保証金率の変更です。

 

次回は、信用取引の使い方についてです。

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信用取引は、確かに現物取引にはないリスクもありますが、他の投資家が使っている有利な制度を、「自分は使わずに勝てる」と思う方が、「どうなんだろう?」と私は思います。

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株式(34)信用取引のコストを1つづつ解説

レバレッジを掛ける事や空売りなどのリスクにはメリットもあります。しかし、信用取引のコストにはメリットがありません。そして、なかなかに大きいです。信用取引をお勧めしない理由があるとすれば、コストの大きさかも知れません。

 

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