前ページ 株式(17)売出(PO) 公募との違いや取得までの手順や日程の目安
次ページ 株式(19)信用権利落ち 失権株の権利入札って何?儲かるの?
目次
隠れた人気者 立会外分売
大株主が売りに出す大量の株式を、市場外(立会外)で、不特定多数の投資家に小口に分けて売る取引きです。単純に大株主の保有する固定株(特定株)が、市場に出回り浮動株になるのですから、需給関係が悪化して株価は下落しやすいように感じます。ところが、意外に頑張って値上がりしていく銘柄が多いのが立会外分売の銘柄です。それには、立会外分売の目的が大きく関係していると思えます。
立会外分売の目的
立会外分売の目的は、主に3つ考えられます。
- 大株主が売却して資金調達したい
- 株主数を増やし指定替えをしたい
- 将来を見据えて流動性を高めたい
などがあります。
1.の大株主が資金調達したいという理由での売却は、需給関係悪化の懸念が強いです。
2.の株主数を増やして指定替えをするというのは、ジャスダック市場や東証二部市場の銘柄が東証一部(指定)銘柄になりたいという事です。東証一部上場するためには、いくつもの規定があり、その中の1つに株主数2,200人以上という規定があるため、長期的な計画のもと、立会外分売などを利用して株主数を増やしていきます。「東証一部上場を狙って動いている」という事は、中長期的にしっかり成長しているという事で、この辺りが「意外に頑張って値上がりしていく銘柄が多い」事に影響していそうです。
3.の「将来を見据えて流動性を高める」の説明は、浮動株と流動性と需給悪化から説明していきます。
今まで固定株として市場に出回らなかった株が、浮動株として出回ると、買いの需要はそのままに、売りの供給だけが増えるので、短期的には需給関係が悪化し株価下落要因になります。しかし、これに企業の成長などの買い要因が加わって来ると、買いの需要も増え、出来高が増加し流動性が高まるので銘柄の魅力も高まります。立会外分売は、売出に比べて遥かに小さな株数で募集出来ます。そのため、需要(企業の成長)に応じて小まめに供給(浮動株)を増やす事が出来るので、一気に需給関係が崩れる事なく「意外に頑張って値上がりしていく銘柄が多い」のではないでしょうか。
ただ、注目されていない企業の成長というのは、材料的にはそれほど強くないので、市場全体の相場環境が悪いとそれに押されてしまうことも、ままあります。
立会外分売の特徴
規模は売出よりも小さく数千万円~20億円程度、目論見書もないため、目論見書の確認も必要ありません。申込みが多い時には、各証券会社に比例配分で配られ、各証券会社の中で比例配分もしくは抽選(証券会社による)などで顧客に配られます。購入手数料は無料です。割引き率は、前日の終値から1%~5%くらい割り引かれます。割引き率は、第一には、売りに出す株主の意向によると思いますが、概ねその銘柄の流動性やボラティリティの高さに比例し、流動性が低くボラティリティが高い方が割引き率は高い気がします。
立会外分売 取得までの手順や日程の目安
日程的には、数週間前から立会外分売の予定が発表されている事もありますが、前日にいきなり発表される事もあります。株主数を増やしたい意向もあり、申込み上限株数が決まっている事が多くあります。申込み時間は、正式には東証で、8:00~8:45と決まっており、これを受けて各社それぞれ申込み時間を決めています。各社の申込み時間は、分売実施日の前日の15:30位?~18:00位?(証券会社・銘柄による)の間に始まり翌日(分売実施日当日)の8:00~8:30位(証券会社による)までと、半日強の短い時間になります。申込み時間を過ぎたらキャンセルは出来ませんので、約定した株数を購入する事になります。重ねて言います、公募・売出と違いキャンセルは出来ませんので注意して下さい。約定結果は、9:00前後に分かる事が多いですが、遅れる事もあります。昔はお昼位になる事もありましたが、今はどうなんでしょう。約定結果が出たらすぐに売却出来ます。
日程をまとめると
- 立会外分売の予定が発表される(数週間前から前日)(銘柄による)
- 立会外分売がある事を正式に発表(分売実施日前日の立会終了後)
- 申込み時間(分売実施日前日の15:30位?~18:30位?から分売実施日当日の8:00~8:30位)(証券会社による)
- 約定結果発表=売却可能(9:00前後に分かる事が多いが遅れる事もある)
売出(PO)と立会外分売との違い
売出と立会外分売では、規模の大きさが違い、そこから付随していろいろな事が違います。対比表でご覧下さい。
立会外分売 | 売出 | |
①目的 | 主に株主作り、流動性向上 | 主に大株主の資金調達、株主作り |
②規模 | 数千万円~20~30億円程度 | 数億円~兆円 |
③目論見書 | なし | 有り |
④申込み可能株数 | 上限有りが一般的 | 上限無しが一般的 |
⑤各証券会社への配分方法 | 比例配分 | 幹事比率による |
⑥主幹事 幹事 | 影響 なし | 影響 大 |
⑦手続き(参加表明) | 配分前日~当日 | BB参加(2~3週間) |
⑧手続き(購入申込み) | 配分当日 | BB終了後 |
⑨手続き(売却) | 配分後 即 | 購入から数日後 |
補足の説明をします。
⑤⑥立会外分売は、各証券会社への配分方法が比例配分方式になっているため、取りやすさに主幹事とか幹事は関係ありません。
⑦⑧⑨立会外分売は、申込みをして当日、若しくは翌日には結果が出て売却も出来ます。
次回は、信用権利落ち入札です。
-
株式(19)信用権利落ち 失権株の権利入札って何?儲かるの?
新株の引受け申込みは限られた人だけが参加出来ます。失権株の権利入札は制度信用取引の整数倍以外の株式分割があった銘柄で行われ、誰でも参加出来ます。権利処理価格が安くなると、信用取引の株式分割時、「わたし損してない?」と思う事になります。
-
株式(17)売出(PO) 公募との違いや取得までの手順や日程の目安
売出は公募株と取得の手順は同じです。共通する需給関係の悪化という悪材料が大きすぎて影に隠れてしまっていますが、ファンダメンタルズに与える影響は全く違います。大株主などが、まとまった株数を売却したい時に行います。公募と売出の違いについても説明します。