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目次
投資信託のメリットに対するデメリット
投資信託は、リスク管理に気を配られており、対象資産の個別銘柄投資にある大きなリスクには、何かしらの対策が考えられています。しかし、リスク対策にはコストが掛り、結果、個別銘柄投資よりも多くの小さなコストやデメリットが加わります。
身も蓋もない言い方ですが、運用力がそのコストを上回れないと、投資信託はひたすらお金を減らす商品になってしまいます。
一方で、投資信託が儲からない理由の中には、実は投資信託の責任ではなく、投資家のやり方の問題ではないかと思える事も意外に多くあります。ここに気を使う事で、少し投資信託の利益を引き上げる事が出来るのではないかと思います。
専門家による運用 誤解の絶えない所です
魅力であると同時に、1番苦情や不満の大きいのも、この専門家の運用です。「専門家が運用してんだろぅ?なんで下がんだよッ?」まったくです。返す言葉もありません。しかし、ちょっとだけ、返す言葉のある所だけ返して置きたいと思います。
パッシブ(インデックス)運用、アクティブ運用に分けて説明したいと思います。
パッシブ(インデックス)運用は、儲けるための努力はしません
パッシブ(インデックス)運用は、日経平均やTOPIX、NYダウなどの対象の指数と同じ動きをするように銘柄を組み入れます。
つまり、専門家(運用担当者)の優劣は関係ありません。その代わり、信託報酬などのコストはアクティブ型に比べると格段に安くなっています。
非常に重要な事なのですが、株式でも債券でも、ほとんどの指数と呼ばれるものは、儲ける為に作られたものではありません。「株式の側面から景気の状況をみる」など、経済状況を知るために作られています。つまり、指数自体(パッシブ運用)は、「儲ける為の努力も工夫も一切していない」と言う事です。
その努力と工夫は投資家自身が、「購入のタイミングを考える」「解約のタイミングを考える」「ドルコスト平均法を使う」など自分でする必要があります。
パッシブ(インデックス)運用に関しては、損をして投資信託の責任にするのはお門違いです。
アクティブ運用 値上がりの理由は相場環境?運用力?
アクティブ運用は、複数の専門家(運用担当者)がチームを組んで、儲けるために努力します。
アクティブ型投信の値上がりの理由は、
- 相場が良くて値上がり
- 運用が良くて値上がり
- 相場も運用も良くて値上がり
があります。
投資信託では、良い運用担当者のいる投資信託は、良い運用が続くと考えられます。しかし、多くの投資信託は、株式の高位組入れ(80%以上とか90%以上など)を謳っています。運用担当者が相場が下がると判断しても、一定以上の株式を保有し続けなければなりません。
投資家のよくある間違いの1つめは、専門家に任せたのだから放っておいて良いと考える事です。株式を高位に組み入れているので、相場が下がればどうしても投資信託も値下がりします。どうしようもありません。相場が下がると思うのならば解約やスイッチングが必要です。
投資家のよくある間違いの2つめは、運用が良くて値上がりした投資信託を解約してしまう事です。
同様の投資信託よりも値上がりしている投資信託を持っていると、多くの投資家は「上がり過ぎているな」などと思い、解約してしまいます。運用が良くて上がっていたのなら、当たりを引いていたのに残念です。
逆に、同様のコンセプトの投資信託が、皆値上がりしている中、値上がりしていない投資信託を持っていると、多くの投資家は「まだ上がっていないから」と残します。しかし、残念ながら、運用の下手な投資信託はずっと下手です。
運用担当者について注意点
運用担当者の成績は、値上がり率ではなく、残高の増減によるところが大きいので、頑張って良い成績を上げた結果解約されてしまうと、ちょっと不憫を感じてしまいます。
ところで、購入した投資信託の運用がすごく良いと思っていても、投資信託の運用担当者は、別の投資信託の担当に移動してしまう事もあります。また、日々刻々と変わる相場環境に付いて行けなくなる事もあります。誰しも、若い頃の勉強量や練習量を維持し続けるなんて事は、なかなか出来ないですものね。長期保有の場合は、注意が必要です。
分散投資の弊害も理解しよう
投資信託は、そのファンドのテーマに沿って数十銘柄から数百銘柄に分散投資されます。1銘柄への投資比率も上限(5~10%くらい?)が決まっています。
また、投資信託にはベンチマーク(運用の基準)や参考指数があり、ベンチマーク以上の運用成果を目指すのですが、逆にベンチマークに大きく劣る事も許されません。ベンチマークは、日経平均やTOPIX、その投資信託の内容に即した業種の指数などが選ばれます。
「100以上の銘柄に均等に近い配分で投資をし、ベンチマークから大きく劣ってはいけない」この条件で、ちょっと頭の中で、組み入れる銘柄を思い描いてみて下さい。何となくわかると思いますが、ベンチマークから数%上方に乖離するのも至難の技に思えます。分散投資はそういう、「平均とかけ離れた成果をあげにくい」というデメリットも背負っている事を理解しましょう。
ベンチマークを大きく割り込むリスクを顧みず、大きく超える運用を望むのならば、組み入れ銘柄数の少ない(~数十銘柄くらい)投資信託がお勧めです。
一部の絶対収益追求型や、現金比率を自由に高められる投資信託は別にして、通常の投資信託を購入、或いは保有し続ける場合は、対象原資産の値上がり期待を判断材料にしましょう。中長期的に対象原資産が下がると思っているのならば、長期保有などと言う言葉に惑わされず、解約やスイッチングをする事がリスク回避のコツです。
なお、私が投資信託と相性が良いと思う原資産は、非常に魅力的な市場だが個別には倒産リスクや破綻リスクの大きいものです。
具体的には、新興国の株式や新興市場の株式、債券で言えばハイイールド債などです。紛らわしいのですが、高金利国の国債などは、証券会社で取り扱っているのならば、国債そのものを買う方が良いと思います。ハイイールド債は分散投資で破綻リスクを軽減出来ますが、同一国の国債は分散してもあまり意味がありません。金利低下による値上がり益が取りにくくなるだけです。
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豊富な投資先 様々な対象商品やテーマの投資信託
投資信託の投資先は非常に豊富です。
ただ、この豊富な投資先については、目的のテーマの投資信託が非常に探しづらいという、大きな欠点があります。同じテーマの投資信託でも、各投信会社が思い思いの名前で設定しており検索しづらく、さらにその投資信託を取扱っている金融機関は、あちこち入り乱れています。
投資信託の検索サイトも、目論見書の商品分類や属性区分での検索は出来ても、類似の特色の投資信託を検索、比較出来るサイトは、私は見たことがありません。
証券会社の社員にすら覚えきれない
投資信託の種類に関しては、証券会社の社員でさえ、自社の扱っている投信以外は、ほぼわからないと思います。入社2~3年目の社員では、自社の投信でも古いものはわからないと思います。目論見書やパンフレットをチラッと見れば、大方の内容はわかりますが、名前だけではわかりません。つまり、求める投資信託の検索は、容易ではないという事です。
私事ではありますが、昔、証券会社に勤務していた時に、勤めていた会社が合併しました。合併相手の会社の支店に転勤になった時に、「やることは一緒」と思っていたのですが、一番困ったのがこの投資信託でした。
合併前の会社で扱っていた投資信託でしたら、名前を聞けば事細かに説明できるのですが、合併先の投資信託がまったくわかりません。目論見書を確認して説明する姿に、さぞかし頼りない人が来たと思われた事でしょう。
次回は、投資信託の購入までの流れと注意点です。
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投信(5)投資信託の購入までの流れと注意点
投資信託は、銀行、証券、ゆうちょ銀行、保険会社、信用金庫や農協など、幅広い金融機関で取り扱っています。購入する時には、取引のある金融機関の投資信託の中から、良さそうなものを探し売買する事が多くなります。
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投信(3)投資信託のリスクとコスト 長期保有するべき?
何事でも、期間が長くなればなるほど不確実性(リスク)は増します。投資だけ、期間が長くなればなるほど安全性が増すなどという事はありません。「長期保有する事でリスクが減る」ではなく、「長期保有出来る資金ならば、リスクを回避しやすくなる」です。