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今回は仕組み債後半 日経平均株価連動債、EB債について解説します。
目次
日経平均株価連動債(日経平均リンク債)
参照指標が日経平均株価ということで、株をやっている方にはイメージがわきやすく、難しい内容のわりに、理解し易い商品ではないかと思います。良い商品かどうかは、相場状況次第です。商品設計は決して悪くはないと思いますが、大きなリスク(ノックイン)があり、その発生確率が投資家が思う以上に高いということに留意する必要があると思います。
商品説明をします。どう説明するのが良いか迷いましたが、1番色々条項が付いていそうなタイプの例をあげて説明しようと思います。条件としましては、(※の部分は証券会社によって若干違うかも知れません。)
3年満期(仮にです) |
参照指標 日経平均株価 |
当初日経平均株価(※受渡日の日経平均株価終値) |
ノックイン水準(当初日経平均株価の70% |
観測期間 ※受渡日から満期日の10営業日前まで。 |
早期償還判定水準(※判定日は利払い日の10営業日前の日経平均株価終値) 当初日経平均株価の105% |
利率年率 4.0%/0.5% |
利率判定水準(※判定日は利払い日の10営業日前の日経平均株価終値) 当初日経平均株価の85% |
最終日経平均株価終値(※満期日の10営業日前) |
以上が条件です。続いて商品名が
早期償還条項付ノックイン型日経平均株価連動デジタルクーポン円建社債
どうですか長いでしょう!でもこれ、全部条件をくっつけたわけではなくて、これが平均的なタイプなんです。では、説明いきます。
3年満期です。仮に100万円買ったとします。
利払いは年に4回(3ヵ月ごと)あり何事もなければ1%(年率4%の1/4)の利息を3ヵ月ごとにもらって3年後に満期です。
2回目の利払いから利払い日の10営業日前というのがポイントになります。この日の日経平均株価が早期償還判定水準を上回っていると10日後の利払い日に利息をもらって額面金額100万円で早期償還です。逆に利率決定水準を下回っていたら利率が0.125%(年率0.5%の1/4)になります。
早期償還しなかった場合、これを利払いの度に繰り返します。早期償還もノックインもしなかった場合は、満期日に最後の利払いと額面金額100万円を受け取って終了です。
観測期間中に日経平均株価終値が一度でもノックイン水準を下回るとノックイン事由が発生します。しかし、ノックインしても、早期償還になった場合(当初日経平均株価の105%まで回復した時)は額面金額100万円で償還です。
また、満期の時に最終日経平均株価が当初日経平均株価を上回っていても、額面金額100万円で満期です。
当初日経平均株価まで戻らなかった時は、額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均株価です。
この商品を選ぶポイントは、
- 早期償還しなければ自分からは解約出来ないので、人によってまちまちと思いますが満期まで全く必要なく置いておける資金かどうか。
- ノックイン水準の日経平均の30%、40%という下げは半年から2年位の期間をかけて何度かあったという事を踏まえて、今回は大丈夫と思えるかどうかです。
2.について補足すると、90年バブル崩壊、2000年ITバブル崩壊、2007年サブプライムローンからのリーマンショックなど起こった当時は100年に一度の大暴落などと言われていました。しかし、実際には5年から10年に一度起きています。そして、この日経平均株価連動債の性格上、早期償還すると同じ商品にロールオーバーしていく可能性が高いという事です。商品内容は決して悪くないと思いますが、以上2点は注意して下さい。
EB(エクスチェンジャブルボンド)債(他社株転換可能債)
EB債は個別銘柄を参照指標にします。商品性は転換社債の他社株版と思われがちですが違います。どちらかと言うと、日経平均株価連動債の個別銘柄版のような性格です。
転換社債との一番大きな違いは株式に転換するかしないかを自分には決める権利が無いことです。日経平均株価連動債との違いはノックインした時に30%目減りした現金ではなく30%目減りした株券で返ってくるという事です。また、個別銘柄ですのでほとんどの場合、日経平均よりボラティリティ(変動率)は高くなります(リスクが増えます)。
では、例をあげて説明します。(※の部分は証券会社によって若干違うかも知れません。)
1年満期(仮にです) |
参照指標 個別銘柄 |
当初価格(※受渡日の株価終値) |
行使価格 株券で償還する時に株数を決めるための価格(※今回は=当初価格) |
ノックイン水準(当初価格の70%)(仮にです) |
観測期間 ※受渡日から満期日の10営業日前まで。 |
早期償還判定水準(※判定日は利払い日の10営業日前の株価終値) 当初価格の105% |
利率年率 8.0%/0.5%(仮にです) |
利率判定水準(※判定日は利払い日の10営業日前の株価終値) 当初価格の85%(仮にです) |
最終価格(※満期日の10営業日前の株価終値) |
以上が条件です。では、説明いきます。
1年満期です。仮に100万円買ったとします。利払いは年に4回(3ヵ月ごと)あり何事もなければ2%(年率8%の1/4)の利息を3ヵ月ごとにもらって1年後に満期です。
2回目の利払いから利払い日の10営業日前というのがポイントになります。この日の株価終値が早期償還判定水準を上回っていると10日後の利払い日に利息をもらって額面金額100万円で早期償還です。逆に利率決定水準を下回っていたら利率が0.125%(年率0.5%の1/4)になります。
早期償還しなかった場合、これを利払いの度に繰り返します。早期償還もノックインもしなかった場合は、満期日に最後の利払いと額面金額100万円を受け取って終了です。
観測期間中に株価終値が一度でもノックイン水準を下回るとノックイン事由が発生します。しかし、ノックインしても、早期償還になった場合(行使価格の105%まで回復した時)は額面金額100万円で償還です。
また、満期の時に最終価格が行使価格を上回っていても、額面金額100万円で満期です。行使価格まで戻らなかった時は、額面金額100万円÷行使価格=株数の単位株分を株券で単位未満株分を現金で返ってきます。
この商品のポイントは、
- 利率判定水準以上であれば非常に金利が高い
- 満期までが短く流動性をあまり気にしなくても良い(途中換金は出来ません)
- 保有期間中対象銘柄が上がっても恩恵はなく(額面金額以上にはならない)、下がってノックイン水準以下になると評価損が発生する
- 株券で償還される事がままある
という事です。行使価格が当初価格より10%位低く設定されていれば、もう少し下がったら買いたい銘柄を買う時などに、下がらなかったら金利をもらうつもりで使えるのですが、当初価格=行使価格ではどういうシチュエーションで買うのかイメージが浮かびません。
この商品で高金利を得ようと思ったらボラティリティ(変動率)の高い銘柄を選ぶ事になるのですが、その銘柄が上がると思うのなら株を買うべきであり、ボラティリティの高い銘柄を選んでおいて、値動きしない事を期待するというのもトンチンカンな話ですしね。
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次回は債券の投資手法について説明します。と言ってもオーソドックスなのを1つしか知らないんですけどね。個人投資家ならこれ1つで十分かと思います。
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