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株式(15)公募株・売出のつなぎ売り(空売り)規制について

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つなぎ売り(信用取引の空売り)の規制について

結論

まず、結論から書きますね。理由には興味のない方も多いと思いますので。

  1. 公募増資発表前と公募価格決定日の翌日以降は、この規制にはかからないのでやって良い。
  2. 公募増資発表~公募価格決定日に建てた空売りの、公募株による現渡し決済は禁止。
  3. 公募増資発表~公募価格決定日に建てた売建て、公募株それぞれを買落ち、現物の売りで同日同時に決済するような事は、法令の解釈しだい。(私は限り無くアウトに近い気がします。因みに解釈というのは、あなたの解釈ではなく、裁判官の解釈です。)

(どうじっくり読んでもこうとしか読めなかったですが、違っているかも知れないので参考までにして下さい。)

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この結論に至った理由

平成23年12月1日 公募増資に関連する空売り規制が金融商品取引法の改正と内閣府令により施行されました。

詳細正確な情報はこちら→ 金融庁

金融庁のホームページの文章から読みといていくと、まず、

平成22年12月24日に公表された「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」というものがあります。このアクションプランに盛り込まれた方針に、①「増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った上で新株を取得する取引を禁止することとし、平成23年度上半期を目途に金融商品取引法の関連政府令の改正を行う。」というものがあります。

この文章で解釈すると、②「増資発表日~発行価格決定日までに空売りをした者は、公募株を貰う事自体が禁止」となります。ここで、アクションプランとはなんぞや?と調べてみると、「行動計画書」とあります。つまり、計画であり法令ではないという事です。しかし、法令関係で使う場合は、後に出来る法令の、出来た理由や解釈の仕方の指針になるもののようです。

これに基づいて、公募増資に関連した不公正な取引への対応として、金融商品取引法施行令の一部を改正する政令が、内閣府令と併せて平成23年8月30日に公布され、平成23年12月1日より施行されました。

この改正により、③何人も、増資公表後、新株等の発行価格決定までの間に空売りを行った場合には、当該増資に応じて取得した新株等により空売りに係る借入れポジションの解消を行ってはならず、これに違反した場合には処罰されることとなりました。

となっています。少し文言が変わってきていて、④「公募株を貰う事自体は禁止ではないが、公募株で空売りの解消を行ってはいけない」つまり、現渡し決済はダメという事です。

次に金融商品取引法施行令と内閣府令の原文を見てみると、まず、金融商品取引法施行令第二十六条の六に

(空売りに係る有価証券の借入れの決済)

第二十六条の六 ⑤何人も、有価証券の募集又は売出しが行われる旨の公表がされてから当該有価証券の発行価格又は売出価格が決定されるまでの期間として内閣府令で定める期間において当該有価証券と同一の銘柄につき取引所金融商品市場における空売り又はその委託若しくは委託の取次ぎの申込みを行つた場合には、当該募集又は売出しに応じて取得した有価証券により当該空売りに係る有価証券の借入れ(これに準ずるものとして内閣府令で定めるものを含む。)の決済を行つてはならない。

とあり、先ほどの③④の解釈と同じ内容になります。気になるのは、カッコ内の(これに準ずるものとして内閣府令で定めるものを含む。)の部分ですが、これは内閣府令第十五条の六に

(借入れに準ずるもの)

第十五条の六 ⑥令第二十六条の六第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)に規定する内閣府令で定めるものは、売戻条件付売買又はこれに類似する取引による買付けとする。

とあります。売戻条件付売買とは、外国人投資家や機関投資家などがよくやるのですが、自力で保険会社や大株主などから、返却期日を決めて株券を借りてきて売却し、期日迄に買い戻して返却する取引きの事かと思います。

しかし、③④⑤のどれも「公募株で空売りの決済を行ってはならない」という締め括りです。

以上から解釈すると、法令では公募増資(PO)の発表~公募価格決定日までの間に空売りした信用売建て玉を、公募で取得した株券で、現渡し決済してはいけないとなります。また、法令の考え方(アクションプラン)としては、公募株を取得したい場合は、公募増資(PO)の発表~公募価格決定日までの間に空売りをしてはいけないとなります。(どうじっくり読んでもこうとしか読めなかったですが、違っているかも知れないので参考までにして下さい。)

そして、この判断に影響する事ではないと思いますが、ディスカウント価格で募集する企業は、もちろん資金調達のためという理由がありますが、長期で安定した株主様になっていただきたいという想いもありディスカウントしていると思います。短期で鞘取りする人には「おめ~じゃねえよ」って気持ちかと思います。一方で、投資家も決して楽して儲けられているとは思いませんので、出来る事はするという判断は正しいと思います。しかし、発行企業の気持ちを汲むという意味でも、この空売りに規制をかけると言うことは正しいような気がします。ただ、正直!、「規制を掛けるのはここじゃないだろ!増資インサイダーだろ!」って気はしますが。

話を戻して。まとめますと、

  1. 公募増資発表前と公募価格決定日の翌日以降は、この規制にはかからないのでやって良い。
  2. 公募増資発表~公募価格決定日に建てた空売りの、公募株による現渡し決済は禁止。
  3. 公募増資発表~公募価格決定日に建てた売建て、公募株それぞれを買落ち、現物の売りで同日同時に決済するような事は、法令の解釈しだい。(私は限り無くアウトに近い気がします。因みに解釈というのは、あなたの解釈ではなく、裁判官の解釈です。)

以上、公募・売出のつなぎ売り(信用取引の空売り)の規制についてでした。

次回は、その他のエクイティファイナンスで、第三者割当増資・株主割当て増資・新株引受権付社債・ストックオプションについてです。

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公募増資は既上場企業が資金調達をしたい時に行います。新株(自己資本)を発行して資金調達しますので、銀行借入れや社債発行と違い、返す必要のないお金です。公募と売出はどちらもPO(公募・売出)と言いますが、別物ですのでその違いについても説明します。

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