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積立て(7)一般NISAの変更点とつみたてNISAとの比較

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2020年(令和2年)の税制改正で、2024年(令和6年)からNISA制度が改正される事になりました。今回の変更点は、投資開始出来る期間以外は、ほぼ一般NISAの変更点です。※NISA(少額投資非課税制度)

今回変更になった一般NISAは、これまでも変更後もどちらも一般NISAという名称なのですが、説明のためこのブログでは、これまでの一般NISAを一般NISA(旧)、新しい一般NISAを一般NISA(新)としています。

つみたてNISAに大きな変更はありません

投資開始出来る期間の延長以外の変更点はありません。投資を開始出来る期間が5年間延長されて、2037年(令和19年)12月→2042年(令和24年)12月になりました。2042年に投資した資産は、2042年から20年間(2062年まで)非課税で保有出来るという事です。

  • 非課税投資枠        年間最大40万円
  • 非課税保有期間    最長20年間
  • 対象商品                 公募投資信託等つみたてNISA対象商品のみ
  • ロールオーバー   出来ません

に変更はありません。

一般NISA(旧)から一般NISA(新)への変更点

色々変更点があります。

大きな変更点は、非課税投資枠、投資対象商品、投資開始出来る期間などです。一般NISA(新)は、2階建てになり、1階部分(積立て枠)20万円+2階部分(一般枠)102万円の合計122万円になります。

まずは、一覧表をご覧下さい。

非課税投資枠
一般NISA(旧) 一般枠 年間120万円
一般NISA(新)  1階(積立て) 積立て枠 年間20万円
一般NISA(新)   2階(一般) 一般枠 年間102万円(条件あり 注1※)
投資対象商品
一般NISA(旧) 株式投信、国内株、外国株、ETF、REIT、ワラント債など (対象外:預貯金、債券、先物、FX、金など)
一般NISA(新) 1階(積立て) つみたてNISA対象商品のみ
一般NISA(新) 2階(一般) 一般NISA(旧)から株式の監理銘柄や整理銘柄、レバレッジ投信などが除外される
投資開始出来る期間
一般NISA(旧) 2023年(令和5年)12月まで
一般NISA(新)(1階、2階) 2024年(令和6年)1月~2028年(令和10年)12月まで
ロールオーバー(5年目の非課税保有期間終了(年末)前に手続きが必要)
一般NISA(旧) 新NISAに5年目最終売買日の終値で全額ロールオーバー出来る
一般NISA(新)  1階(積立て) つみたてNISAに簿価でロールオーバー出来る
一般NISA(新)  2階(一般) 制度の延長がなければ一般NISAが終わってしまっているため出来ない

 

一般NISA(新)の非課税投資枠は2階建て

一般NISA(新)は、原則、1階部分(積立て枠)に投資してからでないと2階部分(一般枠)に投資出来ません。(注1※)

しかし、1階部分20万円を使いきる必要はなく、少額でも1階部分へ投資していれば2階部分(一般枠)への投資は可能です。

さらに、2023年までにNISA口座を開設していた人や投資経験者は、届け出をすれば1階部分(積立て枠)に投資していなくても2階部分(一般枠)に投資出来るとの事ですので、NISAで買い付ける時に書類が1枚追加される程度の影響でしょうか。

 

一般NISA(新)の投資対象商品  2階のみ使用は注意が必要

一般NISA(新)の1階部分(積立て枠)は、つみたてNISA対象商品にのみ投資出来ます。

一般NISA(新)の2階部分(一般枠)は一般NISA(旧)の投資対象商品(株式投信、国内株、外国株、ETF、REIT、ワラント債など)から株式の監理銘柄や整理銘柄、レバレッジ投信などが除外されます。預貯金、債券、先物、FX、金などは投資対象になりません。

なお、届け出をして、1階部分(積立て枠)を使用せずに2階部分(一般枠)のみを使う場合は、上場株式に限られるとの事です。

ETFやREITが上場株式に含まれるのかどうか、旧NISAからロールオーバー出来るのかどうかなどは、私の読解力では金融庁の説明文書からは判断出来ませんでした。

 

ロールオーバーは成功した時にすごく嬉しい制度

一般NISAで値上がりした投資資産は、非課税保有期間終了(年末)前に手続きをすれば、一般NISA(新)の積立て枠も一般NISA(旧)もロールオーバー出来ます。

ロールオーバーの手続きが出来る期間は証券会社によって違いますので注意が必要です。

ちょっとややこしい所は、つみたてNISAはロールオーバー出来ませんが、一般NISA(新)の1階部分(積立て枠)はロールオーバー出来ます。

そして、一般NISA(旧)はロールオーバー出来ますが、一般NISA(新)の2階部分(一般枠)は制度の延長がなければ、5年後には一般NISA(新)が終了してしまっているためロールオーバーは出来ません。

なお、一般NISA(新)の1階部分(積立て枠)は簿価で、一般NISA(旧)は時価でのロールオーバーになります。違いは、簿価でロールオーバーする1階部分は、5年後に残っている非課税枠が確定しています(つみたてNISA40万円-ロールオーバーする積立て枠の簿価)。時価でロールオーバーする一般NISA(旧)は、5年後にならないと残っている非課税枠はわかりません(一般NISA(新)(102万円+20万円)-ロールオーバーする一般NISA(旧)の時価)。

つみたてNISAは元から運用期間が20年あるため、ロールオーバー出来るからといって一般NISAがつみたてNISAより良くなるというわけではありませんが、ロールオーバー出来るという制度は、非常に嬉しい制度です。

仮に株価が大暴騰して、一般NISA(旧)で買った120万円の株式が、5年後1000万円になっていたら、5年後1000万円を非課税枠で投資出来るという事です。

日経平均が17000円→34000円などになっていたら、日経平均型で積立て枠に20万円に投資していた場合、5年後約40万円になっており、5年後の積立て枠は簿価20万円(時価40万円)+20万円で時価では約60万円になります。ロールオーバーは、あると思いがけず嬉しい事になる可能性があります。

 

つみたてNISAよりも一般NISAを選ぶべき理由

NISAという制度は、値上がり益が非課税になるという制度です。期間や値上がり率ではなく、値上がり額が大きい方が、より大きなメリットを享受出来る仕組みになっています。そのため、投資額が大きい方が有利になります。

5年以内に売却してしまうのであれば、つみたてNISAの非課税投資枠は年間40万円まで、一般NISAの非課税投資枠は一般NISA(旧)で120万円、一般NISA(新)で122万円までです。約3倍もの額が投資出来ます。

同率値上がりしたなら、値上がり額では3倍ものメリットがあります。

加えて一般NISAは、投資信託よりも遥かに値動きの大きな国内外の株式などにも投資が可能です。

一方、つみたてNISAは保有出来る期間が20年と一般NISAの4倍もあります。長期投資前提であれば、この点は、つみたてNISAの方が有利になります。

しかし、株式投資をする人ならばわかると思いますが、通常、個人が「ここぞ」というタイミングで株式投資をする場合、20年先を見越して投資はしません。人により、1カ月であったり、3カ月~半年位であったり、1年~2年位であったりまちまちですが、購入から予測がしやすい短期間の間に大きく値上がりする事を期待します。

つまり、5年もあれば十分結果は出ていると思えます。仮に、予想外に長期の上昇相場になり上がり続けたとしても、ロールオーバーすれば10年まで延長出来ます。

株式ではなく、つみたてNISAと同じように投資信託を購入した場合はどうでしょうか。

日経平均30000円の時に、日経平均型ファンドを120万円購入し、日経平均が5年で30%値上がりし39000円になったとします。投資額が1/3の40万円では、20年の間に3倍の90%値上がりし、日経平均が57000円になって同額の利益になります。

5年間で期待出来る値上がりの3倍の値上がりというのは、少し現実味が無いように思います。

以上の事から、一般NISAが選択出来る2028年までは、一般NISAを選択するべきだと思います。

つみたてNISAよりも一般NISAを選ぶ理由をまとめると、

  • NISAは値上がり益が非課税になるという制度なので、値上がり額が大きい方が、より大きなメリットを享受出来る。
  • 値上がり期待で株式に投資する場合、通常、予測しやすい短めの期間で考えるため、5年以内に結果が出て売却してしまう事が多い。
  • 一般NISAはつみたてNISAの約3倍の額が投資出来るため、約3倍の値上がり額が期待出来る。
  • 一般NISAはつみたてNISAでは投資出来ない、より値動きの大きな国内外の株式に投資出来る。

などです。

一般NISAよりもつみたてNISAを選ぶ理由

つみたてNISAの20年という期間は無意味なのでしょうか。そういう訳ではありません。

つみたてNISAは投資信託などが投資対象になります。債券型投信や高配当株式投信などのインカムゲインをメインにする投資信託の場合は、期間が長くなればなる程有利になります。

また、アクティブ型投信などは、運用担当者が上手ければそのメリットを長期間享受出来ます。

しかし、投資信託は数十~数百銘柄の平均株価になるため、値上がり額を競うとなると個別銘柄には一歩も二歩も譲ります。

つみたてNISAは魅力のある制度なのですが、一般NISAと比べてどちらかを選ぶとなると、一般NISAに軍配が挙がります。

一般NISAよりもつみたてNISAを選ぶ理由があるとすれば、「株式相場は良くわからない」という根本の理由があるように思います。

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積立て(8)つみたてNISAよりもiDeCoが良いと思う

つみたてNISAもiDeCoも、税制面で大きな優遇のある制度です。余裕があるのならば両方やっておくのがベターです。どちらかというのならば、資産を非課税のまま切り替えられ、所得控除という優遇税制を持つiDeCoの方が良いように思います。

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iDeCoは、何となくでは理解しずらい程度には複雑です。運用まで理解してから始めようとしたら、多分始められません。iDeCoは、始めた後の柔軟性が非常に高い商品です。まず始めてみましょう。最低金額は、5,000円から概ね1,000円単位です。

 

 

 

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