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債券(7)仕組み債全般説明とクレジット系・為替系仕組み債

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今回は、債券の種類別で仕組み債を説明します。仕組み債全体について、そして、クレジットリンク債、リバースデュアルカレンシー債、デュアルカレンシー債、為替ジャンプアップ債について解説したいと思います。そして、次回は日経平均株価連動債とEB債を解説します。

仕組み債は債券ではない(債券だけど)!デリバティブです。

私の主観ですが、仕組債は基本的に債券とは考えないほうが良いと思います。と言うか債券とは考えないで下さい。債券をベースにした金融派生商品(デリバティブ)ですので、債券にかなり近いものから債券とは掛け離れたものまであります。仕組み債は途中換金不可のものが多いので、流動性リスクも必ず確認して下さい。

仕組み債全般のざっくりとした説明ですが、仕組み債には参照指標というものがあり、それは株価(個別銘柄)だったり株価指数や為替、金利だったりします。

参照指標が30%下がったら損金が発生しますとか、10%上がったら益金が確定しますなどの条件が付けられた債券です。

仕組み債は、債券とデリバティブ(オプションやスワップ、CDSなど)を組み合わせて作るので、オプション(売り)の性格上、出来上がった仕組み債は参照指標が、横這い◯ 値上がり◯△(損はしないが値上がり益は享受出来ない) 値下がり× となる事が多いです。「参照指標があまり動かない」と思える時にやるものだと思って下さい。

そして、償還まで20年とか30年とかあるのに、繰上償還以外で途中換金不可ということも多いです。この、流動性が確保されないと言うことがある意味では最大のリスクかも知れません。

では、具体的な例をあげて説明します。仕組み債は取るリスクがそれぞれ異なっているので一概には言えませんが、大まかにリスクの少ないと思える順に例をあげていきます。

クレジットリンク債  一番債券らしいリスクを負います。私は好きです。

 

クレジット(信用)リスクを負います。クレジットリスクとは倒産などのリスクですね。

あまり聞きなれない仕組み債かも知れませんが、私としては仕組み債の中では普通の債券に近いものかなと思います。

普通の債券は発行体のクレジットリスクを負います。クレジットリンク債はさらに、参照指標としてもう1社別の会社のクレジットリスクも負います。つまり、発行体と参照指標の2社分のクレジットリスクを負うかわりにその分金利が上乗せされる債券です。

公募(広く公に募集される)仕組み債ではあまり生成されないのかも知れませんが、私募(1口5億円とか1億円とかで少人数のために募集される)仕組み債では定番です。もし、公募で見かけたら条件だけでも確認して見て下さい。あまり格付けの低い銘柄だとどうかと思いますけど。

リバースデュアルカレンシー債 償還金が円で利払いが外貨です

為替リスクを負います。仮に参照指標を米ドルとして説明します。買付と償還金が円、利払いが米ドルになります。

元金が円で買付けて円で償還するのでこのままではほとんどリスクがなく金利も出ません。そういう場合は、なにか特約(発行者に有利な条件)を付けて金利アップを図ります。

例えば、償還期限を10年とか20年とか長く取り、一定水準以上の円安にならないと償還しない(早期償還条項)とか、為替が一定水準以上円高になるとクーポンが0になる(トリガー条項)などです。この2つが合わさると10年以上金利0で持ち続けるなんてことになりかねません。

途中換金しようにも、出来ない、または凄く安くなると思います。ただ、辛抱強く償還まで待てば減りはしません。

投資対象と考えるかは、条件(特に期間と金利)しだいです。仕組み債は複雑ですが、為替を参照指標にしている場合は、円高は×、横這いは○、円安は○△というイメージです。

デュアルカレンシー債(2重通貨債)  償還金が外貨で利払いが円です

為替リスクを負います。仮に参照指標を米ドルとして説明します。デュアルカレンシー債は買付と利払いが円、償還金が米ドルになります。

こちらは償還金が外貨なので少し金利は出やすいですが、やはり特約を付けて金利アップを図ることが多いかと思います。

例えば、償還前の決められた日の為替が、当初決めた為替水準より円安なら円で償還(円償還条件)とか、半年ごとの決められた日に発行者が繰上償還するか決められる(任意繰上償還条項)など発行者に有利な条件を付けて金利アップを図ります。ただ、「発行者に有利過ぎるだろう」と思ってしまいます。

円安に大きくブレそうになったら早期償還、円安になって償還したら円償還、円高になって償還したら外貨償還と言うことです。条件に見合うほどの金利アップなら良いんですけどね。因みに、どのくらいの金利アップが適当かというのは、その時々の経済情勢によってまちまちです。大まかにでも見当が付けたければオプションの勉強が必要かと思います。

為替ジャンプアップ債(スーパーボール債) 外貨含み損の解消に

この仕組み債は、「こういうものがある」という事だけは覚えておいて欲しいと思います。というのも、含み損を抱えた外貨を保有していて、「もう少しだけ円安になれば円貨に戻したいのに」と思う事はすごくよくある事なのですが、そういう時に使える仕組み債だからです。

ただし、米ドルやユーロ、豪ドルといった高格付けで取引量の多い通貨なら良いのですが、新興国の通貨の場合は、たとえその通貨を持っていても注意して下さい。その通貨の実際の金利とその仕組み債の金利、円貨↔️外貨の為替手数料は何%か、期間、その通貨の振れ幅の大きさなどを確認して、自分なりに計算してみて下さい。それだけでも、これは割りに合わないんじゃないかと思える場合が、ままあります。

では、商品内容です。買付は外貨建てになります。利払いは通常の外債より少なくなります。償還日の10日ほど前に償還為替判定日という日があり、その日の為替が発行時に決めた償還為替判定基準より円安ならば、判定基準よりさらに円安の水準で円貨で償還されます。判定基準より円高ならば外貨で償還されます。

例をあげますと、参照指標が米ドル、償還為替判定基準100円、償還為替110円で10,000ドル買付けた場合、償還為替判定日の決まった時刻の為替が100円未満の場合は10,000ドルで外貨償還、100円以上であれば償還為替の110円で円貨換算した110万円で円貨償還と言うことです。

また、半年ごとに早期償還判定の特約が付いている場合もあります。償還の判定と同じ事を利払いの度にやりますという特約です。投資家側に有利な条件なのでこれが付くと利払いは少し減ります。

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次回は仕組み債後半、日経平均株価連動債、EB債について解説します。

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仕組債は基本的に債券とは考えないで下さい。今回は、日経平均株価連動債、EB債について解説します。

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債券(6)外債は通貨と発行体が大切。ハイイールド債は投信も有り。

債券の種類別で外債とハイイールド債を説明します。先進国、BRICs、新興国。外債は格付けによって別物になります。債券の魅力は金利と安全性です。その両者のバランスを大きく調整しているのがクレジット(信用)リスクになります。

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