外貨保有が必要な理由に、リスクの基準は円ではなくモノやサービスだからと言うお話を以前させていただきました。
今回は、日本の抱える大きな経済的リスクのお話です。
目次
多くの人があり得るかも知れないと思っている日本経済崩壊のリスク
よく話題になる日本経済が崩壊する程のリスクには、①大地震などの自然災害、②一部アジア諸国との地政学的リスク、③日本の財政破綻などが挙げられます。
こういうリスクが現実となり対処しきれないとなった時に、円の価値が暴落しハイパーインフレが引き起こされます。
① 地震などの自然災害。富士山の噴火って現実感ありますか?
地球の表面には14~15枚の大きなプレートがあり、そのプレートとプレートがずれる事が大地震の原因になります。
日本は小さな島国なのに、なんと4つもの大きなプレートの境界線にあります。太平洋プレート、フィリピン海プレートの海洋プレート2つと、ユーラシアプレート、北アメリカプレートの大陸プレート2つです。
そして、海洋プレートの境界線には火山帯が形成されます。日本の火山帯には、富士山をはじめ、阿蘇山、桜島など100以上の活火山が分布しています。「富士山が噴火したら」って考えておかなければいけない国なんです。
プレートの分布地図で確認するとすごく良くわかりますが、地震に関連する災害に関しては、日本はまさに世界有数の危険地帯です。
そして、日本は、政治も経済も首都圏に一極集中しています。巨大地震や富士山の噴火が首都圏を襲った時にどうなるのかは、見当も付きません。
② 戦争などの地政学的リスク。船から飛行機、そしてミサイルへ
日本は島国です。ほんの100年位前までは、日本を攻撃しようと思ったら船で来なければなりませんでした。大掛かりな準備が必要ですし、武器も大砲です。
ボタン1つでミサイルを飛ばせる現代は、戦争のリスクを過去と同様に考える訳にはいきません。破壊力も大砲とはケタ違いです。たった1発で都市ごと吹っ飛ばせます。
ミサイルは、戦争を抑止し自国の権利を守れれば良い列強国だけでなく、これから地位向上を目指す国も持ち始めています。
たった1人の人間がGoサインを出せば、状況次第では、おそらく誰も止める事なく核ミサイルを発射してしまいそうな国が、核ミサイルを持ち、隣国で日本を射程圏に捉えています。
ミサイルは天災とは違い、狙って首都圏に飛んで来ます。首都圏が放射能や化学兵器に汚染されたら。こちらも、どうなるのかは見当も付きません。
その他にも、日本と領土や排他的経済水域を廻って対立している国がいくつかあります。これらの国々の「理屈が通用しない?」と思える行動はリスクと考えられます。
③ 国債の発行残高増加が止まらない財政問題
日本は経済大国であると同時に、債務大国でもあります。
経済力は、米国や中国にこそ見劣りしますが、その他の先進国に比べれば遥かに強い経済力を持っていました。そして、その強い経済力がなければ、許されないだろうレベルの借金があります。
具体的には、令和2年で、税収約57兆円に対して1200兆円の借金があり、1年間で約43兆円増えています。
国債の金利がほぼ0%だから良いのですが、もし、国債の金利が5%になれば、借換えも含み毎年約200兆円程発行されている国債は、約10兆円づつ金利負担が上乗せされていきます。
他国に目をやると、主だった国の債務は、米国約2300兆円、中国約740兆円、世界4番目のイタリアで約300兆円です。
ギリシャ危機の時に、このイタリアが倒れたらもうどこも助けられないと言われていました。
因みに、助けたらユーロ全体が共倒れするのではという位の勢いで大騒ぎしたギリシャが、IMFなどから受けた支援は30兆円位だった気がします。
この先、日本の経済力が、破綻どころか並の先進国レベルに埋もれてしまっただけでも、残った借金がどのように扱われるのか見当も付きません。
日本の財政問題をもう少し具体的に
日本の1年間の予算は令和2年でざっくりと、一般会計で歳出(支出)約106兆円。歳入(収入)の内訳は、税収約57兆円、その他約6兆円、足りない約43兆円は国債発行等の借金で賄われています。令和2年は約43兆円借金が増えた計算になります。
これに加えて特別会計というものが約250兆円あります。歳入に国債の償還金や社会保険料などが有り、殆んどの部分は歳出と相殺されていますが、復興債発行など上乗せされる借金もあります。
因みに、令和3年は100兆円以上借金が増える予定です。コロナ対策という事で兆円単位の予算をバンバン組んでいますが、誰が返すのでしょうか?
そして、溜まりに溜まった国債発行残高は990兆円、他に地方債などが200兆円あります。1997年約258兆円から、毎年約30兆円~70兆円位づつ増え続けた結果です。
他国に目をやると、債務残高では、米国 約2300兆円、日本 約1200兆円、中国 約740兆円。米国、日本、中国と大きく離れて、世界4番目のイタリアで約300兆円です。
経済力を表すGDPでは、ドルベースのものを為替110円で円換算すると、米国 約2300兆円、中国 約1617兆円。米国、中国と大きく離れて、3位の日本が約550兆円です。4位のドイツが約418兆円、イギリス、インドが約297兆円と続きます。
中国に抜かれて3位になってしまった事よりも、4位以下との差がなくなって来ている事の方が問題かと思います。もう既に、日本の経済力は並みの先進国レベルになっています。
日本の借金は、IMFや他国が助けられる規模を大きく超えています。破綻しそうな国の再建のために打たれる対策は、主に被害が他国に拡がらないようするためであって、結果、破綻した国を助けるに過ぎません。日本人が享受している世界に誇る様々な公的サービスはすべてカットされると思って良いでしょう。
国民健康保険や介護保険、公的年金。滅多に停電しない電力、細部まで舗装された道路、きれいな公園や治安の良い街 等々。我々が当たり前に享受している様々な公的サービスは、世界の平均的な国々に比べて遥かに充実しています。「援助してもらったお金でこれらを維持します。」って、援助する国の国民は誰も納得しないですよね。
手軽に出来る対策は外貨やモノの保有
外貨を保有していると円高になった時に資産が目減りしますが、これらのテールリスクを考慮すると些細な事です。ゆえに、日常生活に困らない程度以上の資産のある人には、一部外貨保有がお勧めされます。破綻して通貨高になる国はないからです。
国の破綻まで考えた時に、「円資産を避ける」「特に日本国債を避ける」「国の社会保障費に頼らない」などの対応が必要になります。
具体的に簡単に出来る対応策は、外貨やモノを保有するという事です。
もちろん、米ドルにもユーロにも、同様のリスクがそれぞれあります。円やコモディティも含めて分散投資するべきでしょう。
私たちの国の借金の感覚って。
お金を借りる時には収入や支出、資産などを計算し、返す算段を付けてから借りると思います。私はそれが当たり前だと思うのですが、、、。
しかし、生活が困窮し、ギリギリの所に突発的な支出が加わると、支出を抑えても収支が合わず、借金地獄へと突き進んでしまう人もいます。こうなる前に絶対踏み止まるべきだとは思いますが、背に腹は代えられません。厳しい世の中です。ここまでは、「どうしようもない時もあるのかな」とも思います。
しかし、世の中には、支出を抑えるなどという事は一切せず、「返せるから借りて良い」ではなく「貸してくれるから借りる」とか「借りられるから借りる」という頭のぶっ飛んだ人たちもいます。
日本の財政は何かそういう、借りたお金を返す気がないように見えるその人たちと同類の思考に思えます。
そして、お金を貸した側の話ですが、騙されてお金を貸した人たちのよく言うセリフが「絶対大丈夫だって言うから貸したんだ」とか「まさかあの人(国や大企業)があんな嘘をつくなんて」などです。騙されてお金を貸した人たちとは、国の借金で言うと、日本国債を持っている人たちに当たります。
勿論、言い分が正しい時もありますが、何時も騙されない人たちは思います。「そりゃ騙した方が悪いけども、騙される方もおかしいんじゃないの」と。騙されない人たちとは、国の借金で言うと、日本のテールリスクにも備えている投資家などです。
しかし、1番やりきれないのは、借りてもいない借金を押し付けられる子や孫の世代の人たちです。
国民皆保険や公的年金を取り上げられ、殆んど人の来ないハコモノや舗装路を見て。病気でも医者に掛かれず、予防のため元気に病院通いしていたおじいちゃんおばあちゃんを思い出し。どういう思いで借金を背負うのでしょうか。
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深刻なのは老後。ビジネスプランと所得の二極化
投資の収益を分け合う投資家や経営者サイドの人たちは、高収入になり得ます。しかし、投資のコストとして組み込まれている労働者の賃金は、どんなに景気が好くなろうと、なかなか上がりません。別口で投資収益を確保しにいく必要があります。