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米国雇用統計って、非農業部門雇用者数と失業率のお話以外はほとんど目にしませんよね。その他の項目って雇用統計が発表された時の新聞記事か、雇用統計のアナリストレポート等に少し出て来るくらいかと思います。
そうは言っても、非農業部門雇用者数と失業率以外の、例えば「~業就業者数」とか「平均時給」などを深掘りしても、実戦であまり出番のあるお話にはならないような気がします。ここでは、非農業部門雇用者数と失業率の回りにはどんなデータがあり、全体の中での位置付けはどのへんなのかお話ししようと思います。
米国雇用統計のデータ収集は、事業所に向けて行う「事業所調査」と、一般家庭に向けて行う「家計調査」の2種類に別れます。非農業部門雇用者数は「事業所調査」で、失業率は「家計調査」になります。
目次
事業所調査は、政府部門と民間部門に分けられ、さらに業種別のデータに分けられています。
非農業部門雇用者数は、政府部門、民間部門に双方に股がり、農業と自営業を除いた全ての業種の合計になるため、重要視されています。
農業は、天候や季節に大きく左右されるため除くという事ですが、そもそも、事業所調査の対象に、農業と自営業者は入っておりません。(家計調査には入っています。)
個別銘柄を保有している方は、「~業就業者数」などの、業種別の就業者数も参考になります。雇用統計を含む各種経済指標は、アナリストなどがレポートを書くための元データにもなっています。タイミングが良ければ、アナリストの業種レポートが出る前に投資判断が出来るかも知れません。
事業所調査には、雇用者数以外にも、「平均労働時間」や「平均時給」などの項目もあります。通常、企業は仕事が増えてきた時や減ってきた時には、従業員の残業時間で調整し、それでも足りなければ雇用で調整します。さらに、雇用を確保しづらくなって来ると時給が上がります。平均労働時間で雇用者数の先行きが予想出来るので、雇用者数と併せて見ると良いかも知れません。
家計調査には、労働参加率や失業率などがあります。
勘違いして覚えていると話が通じないので、まず労働参加率や失業率の定義と、併せて失業率の位置付けの確認をします。
16才以上の軍事就業者を除いた人口を=生産年齢人口 と言います。ざっくり大人全員です。
生産年齢人口のうち、働いている人(従業者)+働く意思と能力はあるけど仕事のない人(失業者)を =労働力人口 と言います。
米国の失業者の定義は、「失業中で就業可能かつ、過去4週間以内に求職活動を行った者」です。
労働参加率は =労働力人口(従業者+失業者) / 生産年齢人口です。労働参加率の分母は生産年齢人口です。
失業率は =失業者 / 労働力人口 です。失業率の分母は労働力人口です。働く気のない人は、失業者ではありません。
つまり、失業者が就職しても失業率は改善しますが、失業者が働く意欲を失くして就職を諦めてしまっても失業率は改善してしまいます。
失業率の計算には、働く意欲を失った人などは含まれておらず、純粋に働いていない人を知りたい時には、他の定義の失業率や労働参加率も併せて見ないといけません。
ところで、労働参加率は、50%台~60%台だったりします。「ニートってそんなに大勢いるの?!」って思ったあなた! ちょっと違います。働く意思のない人の中には、専業主婦や高齢者なども含まれています。
家計調査のデータは、年齢別や性別、人種別、学歴別など細かく集計されています。そして、なんと!失業している理由などのデータまであります。何でそんな事がわかるんだ!って? アンケート調査だからです。
景気の転換期には、失業率と労働参加率のギャップが生まれやすくなります。また、非農業部門雇用者数と失業率が違う動きをした時には、非農業部門雇用者数の方が信頼感が高いのは、失業率に働く意思のない人が含まれていない事にもあります。
以上を踏まえて失業率のお話になりますが、実は米国の雇用統計には、失業率の定義はU-1~U-6 までの6段階があります。今お話しした失業率の定義は、U-3 一般的な失業者の割引 と言う定義になります。雇用統計の発表の時に、失業率として発表されるのも、このU-3 になります。ほんとうに膨大なデータの一部分だという事がわかりますね。U-1~U-6の定義は、
- U-1 失業期間が15週以上の人/労働力人口
- U-2 (解雇+臨時雇用終了者)/労働力人口
- U-3 失業者/労働力人口
- U-4 (失業者+求職活動をしていない者)/(労働力人口+求職活動をしていない者)
- U-5 (失業者+縁辺労働者)/(労働力人口+縁辺労働者)
- U-6 (失業者+縁辺労働者+就業中の縁辺労働者)/(労働力人口+縁辺労働者)
縁辺(えんぺん)労働者=過去4週間以内に求職活動を行っていないので失業者にはならないが、過去1年以内には求職活動を行った者。具体的には、パートタイマー、臨時工、派遣労働者などの休職中の者。
となります。
まとめ
非農業部門雇用者数の位置付けは、
「雇用統計」 > 「事業所調査」 > 「平均労働時間」「雇用者数」「平均時給」の内、「雇用者数」の総合の指標になります。
失業率の位置付けは、
「雇用統計」 > 「家計調査」 > 「労働参加率」 > 「失業率」の6種類ある失業率の定義の内の1つになります。
以上、非農業部門雇用者数と失業率の位置付けでした。
米国労働省労働統計局のWebサイトを貼っておきます。
私のスマホとタブレットは、いつの頃からかわかりませんが、海外のWebサイトを開くと勝手に翻訳してくれます。ちょっと怖い気がしますが、「便利だから、まあ、いいや」と思って使っています。いいのかな?これ。皆さんはどうでしょう。
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投資環境(4)PPIとCPIの違いと規制緩和の影響
製造から出荷までの段階でかかる原料費、人件費や電力、機械などの費用はPPIの上昇率に影響を与えます。出荷から最終消費者に渡るまでの問屋、倉庫、流通、小売店などのコストはCPIの上昇率に影響を与えます。
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プログラミング言語。英語です。パソコンの設定画面、あれを文字として読める人と記号に見える人では、・・・想像出来ると思います。商売においても・・・。日本人で英語がしゃべれる人は2%と言われています。残りの98%は・・・。
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