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生産者物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI) 何が違うの?
生産者物価指数(以下PPI)は、物が製造され工場から出荷する時の価格です。この指数の価格に含まれるのは、材料費、製造費用、製造業者の人件費などです。
消費者物価指数(以下CPI)は、最終消費者が物やサービスを買う時の価格です。この指数の価格に含まれるのは、工場出荷段階の価格に加えて、卸売業者や物流、倉庫、小売業などのコストや中間マージンを上乗せした価格になります。さらに、サービス業のサービスの価格もPPIにはなくCPIには含まれます。
物価上昇率は、2,000年前後まではCPIの方が高かったのですが、以降はPPIの方が高くなっています。物価は、分解すると原料費や製造費用などのコストと、付加価値で出来ています。付加価値は企業の利益や、人件費として従業員の賃金になります。
製造から出荷までの段階では、原料費とか製造までの人件費や電力、機械などの費用がコストとしてかかり、PPIの上昇率に影響を与えます。
自動車や家電製品などを思い浮かべていただければわかりますが、昔からこの分野のコストは、海外との厳しい価格競争に晒されています。PPIの対象になる部分では、2000年以前も以後もコスト削減はされています。
対して、出荷から最終消費者に渡るまでの流れは、仲買の問屋などがいれば問屋、倉庫、配送などの流通、小売店などがそれぞれコストとして費用を上乗せしていきます。このコストはCPIの上昇率に影響を与えます。
CPIの付加価値は、1990年代半ばまでは、国内では複数の規制に守られ、海外業者と渡り合う必要がなく、製造段階ほど厳しいコスト削減は必要ありませんでした。これゆえ、2000年前後までは、PPIよりもCPIの物価上昇率が高かったものと思われます。
余談ですが、ここに、ある大きな疑問の答えがあります。私がずう~っと、もやもやしていた疑問です。
「世の中には、どうしてこんなに物価の違う国があるのだろう」という疑問の答えです。物流や倉庫代、サービスの料金などは国内事情であって、よほど開かれた市場でないと国際化していないんです。そして、物においても、外国の人が売買しない物は、海外との価格競争がないんですね。
消費者物価指数(CPI)の上昇率を下げた各種規制緩和
1990年代半ばから規制緩和が進んでいきます。規制緩和というのは、平たく言うと規制撤廃ですね。規制撤廃というと、良い事のように聞こえるかも知れませんが、規制というものは、元来、弱者を守るためのものです。しかし、それが転じて、既得権を過剰に守る事にもなってしまうので難しいところです。
大きな規制緩和の1つ目は、大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和です。1500平方メートル(政令指定都市は3000平方メートル)を超える大型のスーパーなどは、通産省への届出が必要でした。地域の商店街などの事前審査を通らないと出店出来ない仕組みです。しかし、1990年代始めに、米国のトイザらスが日本で出店しようとした時に、この法律で思うように出店出来ず、米国からの外圧で大幅に緩和される事になりました。
大店法の緩和とはどういう事かというと、商店街の肉屋さんや魚屋さん、野菜屋さんなどがスーパーとハンディなしで価格競争をしなければならなくなったという事です。同様に電気屋さんなども、家電量販店とハンディなしで価格競争をしなければならなくなりました。
しかし、今ではそのスーパーや家電量販店さえも、ネット通販という更なる低コストの小売業と価格競争を強いられています。
こうして、コストの高いお店が淘汰されることにより、CPIの上昇率は下がっていきました。ここまでは、弱い企業が淘汰されてしまったというお話です。
さらなるコスト削減が進んだのは、労働者派遣法の改定です。ここからは、生き残った企業の中の、弱い立場の人たちの賃金が削減されるというお話です。当初13業務に限定されていた派遣の許される業務が、1996年には26業務に、1999年には一部を除いて解禁されました。
以前、正規雇用社員のしていた仕事は非正規雇用社員の仕事になり、勝ち組の家電量販店やスーパーに勤めていても、末端の仕事をしている社員は、収入を大きく減少させていく事になります。
また、昔からの風習で、メーカーから最終消費者に渡るまでの間には、必ず問屋、小売店があり、メーカー → 問屋 → 小売店 → 最終消費者 という流れだったのですが、現在ではメーカー → 小売店 とか 問屋 → 最終消費者 など中間マージンをごっそり省く事も珍しくありません。
2000年以降のCPIの上昇率の低下は、問屋、流通、小売の大幅な人件費の削減が原因と言って良いと思います。現在、政府はインフレ政策を展開しようとしていますが、人件費は削減されたままです。私が、投資などの副収入を得る事をお勧めする理由もここにあります。
規制緩和は、中小企業に厳しい事ばかりですが、良くなった事もあります。この中間マージンを確保するために公然と行われていた、談合やカルテルというものに対する取締は非常に厳しくなりました。談合やカルテルがあると、後発の中小企業では、ほぼその市場に食い込む事は不可能かと思います。厳しくなっている気がしないという人もいるかも知れませんが、昔に比べればだいぶ厳しくなっています。昔は、この談合やカルテルのシステムを造り上げる事こそが、大企業の幹部のお仕事だったようにさえ思えます。
談合とカルテルの違いって?
カルテルの日本語訳が談合でいいんじゃないかと思っていましたが、違うようです。カルテルは買う側同士、或いは、売る側同士で結託する事ですが、談合は場合によっては、買う側と売る側さえも結託する事のようです。確かに、そんな気がします。まさに新規参入を阻止するだけの目的にしか思えません。どういう状況でこんな事が起こるのかというと、買い付ける側の、商品の受け手とお金の出し手が違う場合が多いです。公的機関で買い付けて、国民の税金で払う場合とかですね。往々にして、セットで担当者に賄賂が入っています。ところで、賄賂について思う事があります。「何でこの身分の人が、こんな端た金で。」って思う収賄事件てありますよね。あれは多分、脅されているんじゃないかと思っています。超大口顧客が「お前の責任で取引やめるぞ」とか「首になったら家族路頭に迷うよねぇ」とか「ハニートラップに架かって云々」とかです。賄賂は「ばらしたらお前も犯罪者だぞ。」という単なる口止め料ではないかと思っています。
余談ですが、昔も物を安く手に入れる方法はありました。しかし、「誰でも安全に」という訳にはいきません。
例えば、中古自動車やオートバイ、リサイクル品など、安く手に入れるためには、コネか、目利きと交渉力が必要でした。それが無いと「カモが来た」くらいの勢いでだまされたものです。今で言えば、かなりの程度まで、「だまされた方も悪い」という風潮でした。私は、それでも、なんとなく「あの頃の方が住みやすかったなぁ」と感じています。
規制緩和ではありませんが、「海外から直接買付ける」などということも今ほど簡単ではありませんでした。PCのネットなどありませんし。昔も平行輸入というものはありましたが、そこには詐欺や言語、価格交渉といった少し高いハードルがあり、本当に好きな人達が、痛い目に会いながら身に付けていくスキルだったような気がします。
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次回は、今回の物価のお話の続きで、購買力平価のお話です。FXや外貨投資で気になる、為替の適正水準とか理論値というお話です。
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